初雪@福島市

 福島市は初雪だった。積もりはしないけど。考えてみると、東京より北の地に暮らすのは初めてなわけで、これまで冬好きを自称していたものの無事に乗り切れるのかどうか。日に日に寒さは厳しくなり、とりあえずいまだに暖房器具がないのはマズイと思い、インターネットでエアコンを注文した。来週末に届く。エアコンだけじゃ寒さをしのげず、ヒーターかストーブを用意しないといけないらしい。

 建設会社の人の話によると、福島県では年間の降水量はだいたい一定という。「今年は梅雨や夏に雨が少なかったから、冬に雪として降るはずだ」と言う。ちなみに去年も一昨年も市内で雪が積もることはそれほどはなかったらしい。深夜1時、静かに降る雪を見ながら、まだまだ余所者のわびしさをかみしめる。

 洗濯物がたためない

 のんびりした性格のくせに妙に几帳面なところがある。分かりやすいのが洗濯物。干す時に必ず裏表を直す。Tシャツをたたむ時は必ず襟の口が奇麗に上になるようにする。シャツなんてハンガーにかけっぱなしにしてきたから、最初びっくりした。見よう見まねでたたんでみたけれど、うまくできなくて、「もういい」と笑って怒られる。一緒に古新聞を縛っている時、これなら負けないと思って競争して勝ちを宣言してみたけれど、「そうかなぁ」と笑うだけで認めてもらえなかった。

 相変わらず自分じゃうまくたためない、くしゃくしゃのシャツを見ながら、付き合い始めてから、ようやく3か月たったんだなぁと思う。3年くらいの長さに感じる。

 本当のたからもの

 誕生日を彼女に祝ってもらった。おいしい店を予約してくれたり、ケーキを作ってくれたり、プレゼントを選んでくれたり・・・。「家に帰ってから読んで」と、はにかみながら、手紙を渡してくれた。読んでみて、幸せな気分で胸がいっぱいになって、少し泣いた。これは、たからものだ、と思った。祖母の句集と同じ、今年2つ目のたからものだ、と思って、考え直した。たからものって、なんだろうって。

 形に残るモノも、記憶に残る思い出も、どちらもかけがえないけれど。今を一緒に生きていることが、何よりのたからものなんじゃないか・・・。柄にもないことを書いていて恥ずかしいけれど、心からそう思った誕生日。28歳になりました。

 オーシャンズ11

 「そこだけ雰囲気が違ってて、あの人たちは何者かって、何度も説明しなきゃなりませんでしたよ」。パーティーの雰囲気を振り返って、新郎が嬉しそうに言う。レストランを貸し切った形式で、参加者は50人くらいだったろうか。新郎新婦と同じ30歳前後が中心だったけれど、奥まったソファの一画には、アロハシャツのマスター、白の帽子・白の上下の60歳手前の常連さん、に始まって、10も20も年上な感じ、周りとちょっと違う人々が固まった。新郎の地元のバーの飲み友達だ。

 「例えるなら『オーシャンズ11』みたいだったね」と誰かが笑って言った。客観的に言ったら、「飲み屋で知り合った人の結婚披露宴に行ってきました」ってつまらない言い方になるんだけど、そうじゃない。「飲み仲間」という言葉が一番適切なのかな。この、奇妙な、一体感。デジカメで撮った写真を後から何度も眺めて、とても幸せな気分になる。アルバムにして贈ろう。新しい夫婦と、このバーに。

 盲目中

 プラネタリウムに行った。子どものころをのぞくと行くのは初めて。「8割がた寝ると思う」という彼女を笑っていた俺は、開始15分で撃沈。あれは、どうしたって寝る。映像と一緒に流れていた曲が、たぶん「エキセントリックオペラ」で、懐かしくなって、1枚だけ持っていたCDを聴きなおしている。ベタすぎるデート場所だったけど、あとから考えてみると、七夕の時期だったし、タイムリーではあったのかな。そのうち花火を見に行こうと話をしている。2人だと行く場所が広がって楽しい。まぁ、どこであろうと何であろうと、隣にいてくれれば、それでいいんだけどさ。

 「世間学」かどうかは知らないけれど

 母と妹の誕生日が重なる今月。実家に戻る際に「ケーキを買ってきて」と頼まれて、いつものバーで知り合ったケーキ屋の店長さんにお願いして、特製のケーキを作ってもらった。「近所のケーキ屋さんで、お世話になっていて・・・」と説明すると、祖母が、「あんたは『世間学』を学んでいるね」と、えらく感動していた。

 携帯電話を換えて、電話帳に約250件の登録があることに気づく。そのうち約150件が仕事、約50件が学生時代からの知り合い。じわじわ増えてきているのが、仕事も過去も関係のない飲み仲間。だいたい年上の先輩。世間学かどうかは知らないけれど、カウンターで隣り合っただけの関係から、いろんな頼み事をきいてもらったり、教わったりする人が増えていく。有難くて重たくて、嬉しくて苦しくて・・・。正直、一人関係を閉じたままのほうが楽だと思ったりもするけれど・・・。

 その特製のケーキは、いろんな意味で、涙が出るくらい、おいしかった。

 たからもの

 朝起きたら郵便受けに、祖母の句集が届いていた。昨年からずっと、収録する句の選定や装丁やと苦心していた。ついに形になったんだなぁと思うと、ずしりと重い。略歴をみると、昭和60年から俳句を始めたとあるから、いまさらながら25年の成果だったのかと気づく。なおさら手に重い。何があっても手放せない、手放してはいけないものを、たからもの、と言うのなら、まさにこれがそうだろう。