盲目中

 プラネタリウムに行った。子どものころをのぞくと行くのは初めて。「8割がた寝ると思う」という彼女を笑っていた俺は、開始15分で撃沈。あれは、どうしたって寝る。映像と一緒に流れていた曲が、たぶん「エキセントリックオペラ」で、懐かしくなって、1枚だけ持っていたCDを聴きなおしている。ベタすぎるデート場所だったけど、あとから考えてみると、七夕の時期だったし、タイムリーではあったのかな。そのうち花火を見に行こうと話をしている。2人だと行く場所が広がって楽しい。まぁ、どこであろうと何であろうと、隣にいてくれれば、それでいいんだけどさ。

 「世間学」かどうかは知らないけれど

 母と妹の誕生日が重なる今月。実家に戻る際に「ケーキを買ってきて」と頼まれて、いつものバーで知り合ったケーキ屋の店長さんにお願いして、特製のケーキを作ってもらった。「近所のケーキ屋さんで、お世話になっていて・・・」と説明すると、祖母が、「あんたは『世間学』を学んでいるね」と、えらく感動していた。

 携帯電話を換えて、電話帳に約250件の登録があることに気づく。そのうち約150件が仕事、約50件が学生時代からの知り合い。じわじわ増えてきているのが、仕事も過去も関係のない飲み仲間。だいたい年上の先輩。世間学かどうかは知らないけれど、カウンターで隣り合っただけの関係から、いろんな頼み事をきいてもらったり、教わったりする人が増えていく。有難くて重たくて、嬉しくて苦しくて・・・。正直、一人関係を閉じたままのほうが楽だと思ったりもするけれど・・・。

 その特製のケーキは、いろんな意味で、涙が出るくらい、おいしかった。

 たからもの

 朝起きたら郵便受けに、祖母の句集が届いていた。昨年からずっと、収録する句の選定や装丁やと苦心していた。ついに形になったんだなぁと思うと、ずしりと重い。略歴をみると、昭和60年から俳句を始めたとあるから、いまさらながら25年の成果だったのかと気づく。なおさら手に重い。何があっても手放せない、手放してはいけないものを、たからもの、と言うのなら、まさにこれがそうだろう。

 オトナの花見

 「花見やりましょうよ」「いいねぇ」。いつものバーで言ってみたら好反応。その数日後、再び店を訪れると、なんかみんないろいろプランを練ってくれていた。まず20人くらい座れる場所を1週間前から確保しろ。食器は紙じゃなくてプラスチックのほうが格好いいなぁ。マージャン卓もいるぞ。「七輪持ってくるよ」と言ってくれる知り合いもいて、「じゃあ、あれだな。サシ入りのうまい肉を焼こうじゃないか」

 「『大人の花見』をやってくれ」とマスター。大変そうだけど、やばい、楽しい。

 かぼちゃの島の時間銀行

 小学生のころ、「たくさんのふしぎ」という月刊誌を購読していて、その中の「かぼちゃ人類学入門」という絵本に強烈な印象を受けた。かぼちゃでできた島に住む素朴な人々の話で、奇想天外っぷりに目を輝かせて読んだ記憶がある。その島の銀行には「お金」だけでなくて、「時間」「幸せ」も預けることができるのだ。

 「お金」も「幸せ」もいいから、とにかく「時間」がもっとほしくてたまらない。夏休みを持て余していた大学生時代を思い出しながら、時間銀行さえあれば・・・と考えずにいられない。一方で、「職場に泊まるな。ダラダラ仕事をすりゃいいんだと、お前の後輩が真似をする」と上司に怒られる。もっともだ。もっともだけど・・・。

 「明日なき我等」

 明日の朝に履く靴下がなくて深夜2時にコンビニに買いに行くのは、哀しいことこのうえない。週末バタバタとして洗濯をする時間を取れなかった。部屋の隅に積みあがっている洗濯物の山は、そのまま仕事の行き詰まりっぷりを表している。「入社して何年になる」「2年半です」「そうか、2年半無駄にしたな。君は失敗作だ」。上司の台詞は、しかし心をえぐらずに右耳から左耳へと抜けていく。
 「どれだけ言ったって君は反省するそぶりだけで、実際は何も反省してないんだろうけどな」。おっしゃる通りだ。打たれ強いわけでなく、不感症に近い。今の職場から飛ばすなら飛ばしてくれていいとすら思っている。2年半やってきて、そういえば、仕事でうまくいっていると思ったことがない。いつも何とかやり過ごしてきたけれど、1年目、2年目、3年目と次第に積みあがっていく責任の重さを前にして、繕いきれなくなってきた。
 連日暗い日記だけど、経験則から言って、愚痴を吐いている時よりも日記を書いていない時のほうが行き詰っているので、大丈夫です。たぶん。

 ゴルフデビュー

 グロスで229という、空前絶後のハイスコアに終わる。ボーリングで例えるなら、ガーターばかりで30くらいしかスコアを取れなかったと言えばよかろうか。きちっと飛距離出る方々はカートに乗って移動するところ、俺は半分も飛ばないので、打ったら走って打ったら走って、18ホール分の距離を走りに走りました。雨の中、くたくたの6時間。
 上司とは気軽にプレーできないということも思い知らされた。「走れ」「走るな」。「とっとと打てよ」「もっと落ち着いて打つんだよ」。「頭使えよ」「勝手にやんじゃねえよ」。パニックですよ、もう。ただまぁ、「グリーンの上は走らない」とか、「前の組、後続組の様子をきちんと見る」とか、そういうマナーは、何度も怒鳴られたので身に染みて覚えた。友人と行くと、おざなりになるかもしれない部分なので、そこはよかったのかも。