福島市、震災一週間後

 福島市。自宅の近くに「年中無休」をうたうケーキ屋さんがあって、確かに正月とかもやっていて、休んでいるのを見たことがない。震災から6日目の夕方、たまたま店のそばを通ったら、灯りがついていて、ショーケースにケーキまで並んでいたから、ついつい中に入って、チョコレートケーキを買った。「いまね、このへん断水してるけれど、ケーキなんて作れるんですか」。「そのへんで給水やってますから。そうした水をもらってなんとかやってます」。地震の日も、その翌日も、営業したっていう。「看板に偽りなし」というのは、こういうことだなぁって思った。

 何百年に一度の大地震と言う。しかも、福島では、かつてない原発事故というものまでセットになっている。これくらいの非日常の中にいると、けっこう、人の本性が見えてくる。上司は「どうせ数日中にM7クラスの余震が来るんだ。そしたら原発も止めを刺される。ここの事務所も看板だけになる」とブツブツ、逃げる算段ばかり考えている。俺はもう、この人の目を見て会話することは二度とない。

 仮にも、今このときも、現場で命をかけて被害の拡大を食い止めようという人々がいて、そこから離れた場所でも復興に向けたありとあらゆることのために不眠不休に近い状態で働いている人々がいて、各地の避難所では着の身着のまま寒さに震える人々がいて、1万人を軽く超えるだろう亡くなった人々がいて・・・。記者として、そうした中にいるのであれば、少なくとも、できうる限り、その場所にいて、情報を発信し残すことが、最低限の責務でありプライドであると思う。

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 いろいろと心配くださってありがとうござます。家族ともども無事です。私は福島に残り、妻子は実家に戻りました。4月に東京へ異動予定でしたが、こういう状況なので、GWくらいまで伸びそうな見通しです。